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【レポート】19年05月12日 浅草、旅するトーク

初めての旅するトークで、浅草の雷門から始まり、革職人中野さんの話を聞き、キーホルダー作りを体験しました。

■初仕事

今回が私にとって初めての旅するトーク。 初めていらっしゃるゲストの皆様と同じ目線で、一体これからどんな物語がはじまるのかな。 そんな期待と少しの緊張から始まった、中野さんと革物語の1ページ。

■所持金160円

13:30浅草のシンボルである雷門に集合。観光客のような待ち合わせ場所を選んだ「迷子はるちゃん」と方向音痴の私。 楽しみにしていた当日!と意気込んで家を出たのはいいけれど、集合時間を勘違いして30分もはやく着いてしまった。 けどラッキー! だって、鮮やかな青い空と赤い提灯、浴衣を着た観光客と人力車…独特な雰囲気を放つこの街を観光しない手はない。 そうだ、タイの友達にプレゼント買おうっと!適当な旅の口実をつくって、通りをぶらぶら。 別世界みたいなお土産屋さんに入って、友達に絶対に似合う透き通った玉に桜の模様のついたかんざしと、お揃いの恋愛運アップの香り袋を選んだ。 でも、ひとつ不安なことがあった。今日はそんなにお金を使わないだろう、とお財布をかるーくしてきてしまったので、お金が足りるか心配だったのだ。無事に買えたものの、お店を出ると私の所持金はなんと、260円に。 人で溢れかえる仲見世通りは、お財布の軽い女であろう私にまだまだ甘い香りのお誘いをしてくる。そして特に怖いのは、「人形焼」という名物お菓子。一個100円、…買えるなあ(笑)。そうしてあっというまに私の所持金は160円になった。 もうこれで後悔はなし、と小旅行を終わらせようとしていたら、なんと二個で100円の人形焼が。とことん怖い街だ。もし二個入り100円の人形焼きを見つけていたらはるなさんにあげられたのというのに。 そんなこんなで、やっとはるなさんと会えた。AND STORYの白Tにポニーテールを揺らす、笑顔が素敵なはるなさんといざHIS-FACTORYへ!さすが「迷子はるちゃん」についていくだけあって、迷いながら向かった。

■出会い

今日の会場となる2階に上がると、すでに席の半分以上が埋まっていた。向かいの席に座る女性が、「お茶とオレンジジュース、どっちがいい?」とちょっぴり人見知りの私を、一言の気づかいで輪に入れてくれた。二つ並べられた机を囲って、色々な人がいる。おそらく、ここに来なければ出会わなかっただろう人々。一期一会の出会いは、やっぱり旅の醍醐味といえる。 午前中千葉県で田植えをしてきたという、今回のホストである永山さんが旅の案内人。ゲストスピーカーの中野さんは、ちょっぴり照れくさそうだ。 中野さんは、18歳で上京し、材料問屋や鞄の製造メーカーに勤務したのち、2006年に現在のオーダーメイドの鞄屋さん「HIS -FACTORY」を創業された。 人生の半分以上ものあいだ、革に新しい命を吹き込む仕事に携わってきた中野さん。なぜメーカーの職を辞めてまで職人になる道を選んだのだろう。そしてそこには一体どんなストーリーがあったのか。私の中で次々と生まれる疑問は、中野さんが私たちに「伝えたい!」という想いと一緒に応えられていった。

■つながり

中野さんのメーカー勤務時代の革との向き合い方は、あくまでも「商品」としてだった。多く売ってたくさん儲けることや、どこに行ったら仕事がもらえるかだけをひたすら考える毎日だったそうだ。その業界では、100枚の革があったら100枚同じもので、傷一つないものにこそ商品価値があった。 その後制作拠点がアジアへ流れると、下請け価格はますます下がり、中野さんはついにモノづくりの価値が見いだせなくなった。2004年に墨田区吾妻橋に移転したことをきっかけにオリジナルの制作販売を行うが、最初はなかなか思い通りにいかなかったという。 そして2012年東京スカイツリー開業の頃、中野さんは、「映像を通して墨田区を盛り上げたい。」という一人のフリーランスの方と出会う。これをきっかけに、長く住んでいてもよく知らなかった墨田区と、そこに生きる人々と出会っていった。 新しいつながりが中野さんにもっと広くて深い革の世界をみせたのだ。 墨田区と川向かいの台東区には、個人商店で生きる職人が多くいる街として有名だ。それぞれの道を極めた職人たちに共通していたのは、みんながイキイキしていたこと。区も同様に、街ぐるみで彼らを盛り上げていこうと多くのイベントが開催され、活気に満ち溢れていた。 今まで知らなかった地元との出会いと、そこで得たリアルなつながりは、中野さんをやる気にさせ、革との新しい向き合い方を考え直す原動力になった。

■革へのこだわり以上のこだわり

オリジナルブランドの立ち上げから約10年。中野さんは、イタリア、トスカーナ産の革に長くこだわっている。この革には、自然由来の植物タンニン鞣しを施し、劣化ではなく、“経年変化“という所に特徴がある。つまりアンティークとなって、味がでるのをいつまでも楽しめるのだ。大量生産に施されやすいクロム鞣しは、購入時がベストな状態である一方、トスカーナ産のこの革は「育てる」ことができる。 中野さんは、この革と出会って「しまった」と表現する。というのも、メーカー勤務時代に出会った一人のデザイナーが持ってきたのがこの革だったのだ。昔のようにお金儲けのことだけ考えたら、もっと他のやり方があるのに、この革と出会ってしまったから、こんなに良いものがあるなら使わないのはおかしい、と思ってしまうらしい。中野さん自身も「なんでこんなことしているのかね〜」と冗談まじりに言いながらも、やはり仕事へのこだわりを私たちにまっすぐな言葉で伝えてくれる。 「実際、一つ10万の鞄を、3万で大量生産することも、下請けのときのノウハウがあるから、できてしまう。でも、それをやってしまったら、今までのお客さんを裏切ることになる。それに、今まで積み上げた自分でなくなるでしょ。小さな喜びが積み重なって今があるからね。」と。 これが職人気質というやつなのだろうか。自分の気持ちに正直に生きてきた中野さんだからこそ、職人となり、今ここで私たちが中野さんと出会えているのかもしれない。 中野さんは、押し売りはしたくないという。好みも方法も、10人お客さんがいたら10通りのやり方がある。提案はするけど、お客さんに一番合うものをつくることを大切にしている。 素材へのこだわりはあっても、それ以上に、その人にとっての“最高”を優先する姿勢に、中野さんらしさと、プロフェッショナルを感じる。

■手作り

好きな革を選び、いよいよキーホルダー作りスタート。 「そうだ、旦那さんの誕生日プレゼントにしよう!」と宣言する奥さん。それを聞いて、密かに私も「そうだ、今日は母の日だから、お母さんにあげよう。」と心の中で呟いてみた。みんな、たった今手に入れたばかりの自分の革を嬉しそうにみつめながら、この革の第二の人生を考えている様子。

まずはコバ処理から。中野さんに溶剤をつけてもらって、コルクのようなものでクルッと一周素早くこする。こすると、すぐに革は光をやどした。 そして、好きな色の糸を選んで、その糸の両端をそれぞれ針に通す。専用の台で革を固定したら、革の周りを二本の針で、一周縁どるように縫っていく。しかし、これがなかなか大変なのだ。穴が小さいのか、玉止めが大きいのか、革に糸を一回一回通すのに力がいる。私はこれに苦戦してしまって、何度も、もうこの穴だけは通せないようになっているのかもしれない、と思った。眉間にシワでもよせてしまっていたのか、途中から私を見守って苦戦しだしたら助けてくれるようになった方がいたほどだった。ありがとうございました。

おそらく1時間くらいかかり、ようやく糸が通せた。小さな長方形のキーホルダーだけでこんなに指が痛くなるのに、これが鞄だったらと考えると、店内にある一点一点が、とても尊いものだとわかった。

そして、やっと私的一番のお楽しみポイントの、刻印選び。どんなデザインにしようか。ほとんど自分の好みで、蝶々とお花と葉っぱの刻印にした。 最後にキーホルダーにするための金具を打ち付けて完成! 世界に一つだけの手作り作品は、やっぱり思い入れが違う。この革は、一体どんな風に育つのかとても楽しみだ。 みんな思い思いのキーホルダーができて、満足気。はじめは、直感と偶然で選んだ革たちに、誰かの想いが加われば、革にはまた命が吹き込まれる。それは、手作りだからこそ味わえる感覚なのかもしれない。 お母さん、喜んでくれるかな。外に出ると、あっという間に夕方の空になっていた。 来たときよりも風が冷たくなった。 でも私の心は来たときよりも、ほっこりあたたかくなっていた。

長峯幸来

地域・イベント

【レポート】19年05月12日 浅草、旅するトーク

2019.07.30

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