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【レポート】18年10月24日外苑前、旅するトーク

■東京人といわれて

「東京人ってすごいよなあ。こんな満員電車に毎日乗ってるの」

どこか方言が目立つ男の子たちの会話が私の背中の方から聞こえてきた。嫌みのようには聞こえなかったが、「東京人」という言葉に反応してしまった。そういえば東京に来ていつのまにか3年が経っていたけれど、歩くスピードも速くなっている気がするし、満員電車の光景にもいちいち反応しなくなった。

あの子たちから見ると私も「東京人」に見えているのかもしれない。そう考えると、私も勝手に周りの人のことを「東京人」みたいに見ているかもしれない。

そもそも「東京人」って言葉は「宇宙人」みたい。ここが宇宙だとしたら宇宙船の外には気軽に出れないけれど、私たちはいつだって、どの駅だって降りることができる。

けれど私も、そして同じように地下鉄に乗っている人たちも、頭上を通り過ぎていくたくさんの街のこと、そこで働き暮らす人たちのことをどれだけ知っているんだろう。

 

■ラグビーのポスターに歓迎されて

ここも旅するトークがなければ降りることのなかった、外苑前駅に到着。地上に向かって出口へと長く続く地下道を通っていると、壁にはたくさんのラグビーポスターが貼られていた。

どうやら街もラグビー一色に染まっているみたい。

街全体で何かを応援するって、それだけでなんかかっこいい。この街は絶対に好きになれる、そんな気がした。

そして今回の会場は、ラグビー場に隣接している「秩父宮ラグビー場クラブハウス(ジャパンクラブ)」。通常は一般の人は入ることが出来ないという、ラグビーファンにとっては嬉しい会場らしい。私も伝統ある展示品や写真を眺めてみる。それにしても私、ラグビーのこと全然知らないなあ、大丈夫かなあ…

■ゲストでも、ホストでも

今回のホストは富川選子さん。実は彼女、以前は「ゲスト(お客さん)」として旅するトークに参加した経験のある方。前回は聴く立場だったが、富川さん自身も回りにいる素敵だと思う人を誰かに紹介したくなり、今回の旅の開催につながった。旅するトークは、自分が語ってもいいし、聴く側になってもいいし、誰かを推薦して、素敵だと思う人をみんなに紹介してもいい。どんな形でもよい、人が生み出す旅、それが旅するトークなのだ。

そしてそんな富川さんが旅のトークに選んだ人は、港区ラグビーフットボール協会会長の黒崎祐一さん。

今回は黒崎さんだけではなく、日本ラグビーフットボール協会会長の富岡さん、青山外苑前商店街振興組合の坂本さんをお招きしてのトーク。黒いスーツを着た人たちが前に座って、いつもとはちょっと違った雰囲気に思わず背中が伸びてしまう。緊張。

■初めてラグビーに向き合う

「ところで、ラグビーについてどのくらい知っているかをまず皆さんにお聞きしたいと思います!」

富岡さんの言葉に、ぎくりとしてしまう。私、もしかしたら今日の参加者の中で一番ラグビーについて知識がないかもしれない。

恐る恐る「なにも知らない人」に手を挙げると、なんと私のほかにも数人が手を挙げていた。旅するトークにも初めてだという人がたくさん。初めてのことにチャレンジするのはとても勇気がいること。それなのに、旅するトークにもラグビーにも初挑戦の方がいることに、感動してしまう。

そして今回はそんなラグビー初心者の人でも十分楽しめる内容が盛りだくさん。ラグビーの歴史、なぜ「秩父宮ラグビー場」という名前になったのかなど、ラグビーのことを知っていくたびにその奥深さに魅了されていく。

富川さんと黒崎さんが出会ったのは今から8年前。東京23区内唯一のラグビースクールに息子さんを入れたのがきっかけで知り合うようになった。

一方の黒崎さんは、父が経験者ということでラグビーを始めたという。当時はやんちゃ少年だったという黒崎さん。ラグビーを通して、目標に対してコミットすることの大切さを学んだ。

ラグビーが素敵なスポーツは経験したことのある人・観戦したことのある人は感じているが、そのコミュニティはまだ小さく、新しい人が入ってきにくい環境も一部存在してしまう。2019年はそんなイメージを払拭する大きな機会であると話す。それが「ラグビーワールドカップ」だ。

 

■昔と今を比較してみる

また今回は商店街の方により、ラグビーとこの街がどのようにタックを組まれてきたのかについても話を聞くことができた。

旅するトークでありそうでいままでなかったこと、それは昔の写真をもとに、現在のどの場所にあたるかをみんなで考えるという時間。

東京メトロの入り口や、青山通りを通る都電の軌道。

次々と出てくる写真に、今の面影を感じさせるものはない。ビルは?おしゃれなお店は?昔は表参道を泥だらけで走りながらザリガニやセミを捕まえに走っていたという坂本さん。

今はすっかり観光地になった青山に、そこに住む人たち、そして外から来た人たちすべてを繋ぐためには…。そこで取り組むことになったのが、ラグビーと、街がつながるイベント。「秩父宮みなとラグビーまつり」はそんな想いで開催されたのだ。

 

■One For All, All For One

旅が終わり、旅の参加者同士が仲良く話をしている。初めて会った人たちが、旅が終わると、自然と共通の話題で話ができるのがいつも嬉しい。名前を聞く前に、その人の好きなものを知れる自己紹介って、不思議なんだけど、とても素敵。

そして今日の旅は、終了後にもまだものがたりがあった。特別に黒崎さんが現役のころの試合の動画が映し出されたのだ。今は優しい笑顔が魅力的な黒崎さんだが、選手時代は今と体格も顔つきも全く違う。映像の中の黒崎さんがトライを決めると、生中継の試合を見ているかのようにみんなが盛り上がる。最初の緊張した雰囲気はどこに行ったのだろう。試合を見ているときはみんな一つ。私はそんな風景を嬉しく思いながら外に出た。会場に入るときには気が付かなかったが、クラブハウスの外に出ると、秩父宮ラグビー場は秋の夜にはっきりと姿を見せていた。それはラグビー選手のようなしっかりとした佇まいだった。

街を彩る人を知るたびに、そこは知らなかった宇宙ではなくなる。

酸素の量は変わらないはずなのに、温かい人たちに会うと酸素をいっぱい吸いこめる。

だからいつかあの子たちにも、そんな出会いが届けられたらいいな。

 

早川遥菜


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